2003.09.21 / X JAPAN FILM GIG featuring ART OF LIFE
                       日本武道館


Opning. 紅
1. VANISHING VISION
2. BLUE BLOOD
3. Amethyst
4. Rusty Nail
5. DAHLIA
6. WEEK END
7. UNFINISHED
8. Say Anything
9. 紅(名古屋レインボーホールでの映像)
10. Longing
11. 紅
12. オルガスム
13. ART OF LIFE
14. Drum Solo
15. Forever Love
16. Silent Jealousy
17. SCARS
18. X
19. ENDLESS RAIN
Ending. Tears 



この日は、雨が降っていた。前日からの雨が一向にやもうとしない。つい2日前まで真夏を取り戻したかのような暑さだったにもかかわらず、この日は寒ささえ漂わせる秋の空気だった。
日本武道館は、正午を回る数時間前から、既に大混雑していた。
それもそのはず。この日は、「X JAPAN FILM GIG featuring ART OF LIFE」の当日だったのだ。
 会場の外では、X JAPAN 関係のグッズを販売している。
ポスター、Tシャツ、キャミソール、バスタオル、キーホルダー、携帯ストラップ、ステッカーなど、数々の種類のグッズが並べられていた。
そしてX JAPAN のコンサートと言えば欠かせないのが、
コスプレをしているファンたちの存在である。
89年代のYOSHIKI、TOSHI、HIDE、PATA、そして TAIJI、髪を下ろしてからのYOSHIKI、TOSHI、93年に入り、新しくベーシストとして加入したHEATH、95年末に髪をバッサリ切って以来、
その状態を維持し続けている現代のYOSHIKIなど、様々なメンバーがそこには存在した。
誰も彼もが、本人かと思ってしまうほどそっくりである。
また、雑誌記者がコスプレをしているファンの撮影を行っている。
雑誌記者に撮影を依頼されると、すぐさま自分なりのポーズを作ってしまう所などは、流石と言うべき所だろうか。
雨の中の寒さなど物ともせずに、過激な格好をしているファンたちも少なくない。


 この日のコンサートの開場時間は、15時。
従来のX JAPANのコンサートならば、開場は1時間押し。
開演は2時間押しなどが常識だが、時間通りに15時に会場をした。
8つの列になったファンたちが少しずつ会場に入場していく。

 ステージには、巨大なスクリーンが8方向に渡り設置されていた。この巨大なスクリーンの中で、X JAPAN時代のYOSHIKIが、HIDEが、PATAが、HEATHが、TAIJIが、そしてTOSHIが帰ってくるのである。
開場の客席は大きく8 つに分けて並んでいて、それぞれの席で1つのスクリーンを見ることが出来るように作られているようだ。
15時をすぎて直後に会場入りできたファンもいれば、開演時間の16時ぎりぎりに会場入りになってしまったファンたちもいる。
そして会場には、美しいクラシック音楽がかかっていた。
どうやらどの曲も、 YOSHIKI Selectionに収録されているナンバーのようだ。
その中には、おなじみのあの曲、Amethystも存在した。
去年末に東京国際フォーラムで開催されたYOSHIKIのシンフォニックコンサートにおいての
、ボーカル付の演奏は、まだ記憶に新しい。
客席は少しずつ埋まっていき、集まったファンの数は、ほぼ満席状態だった。やはり、X JAPAN のかつての人気は今でも健在である。



 そして、予定開演時間の16時を10数分すぎた頃だろうか…それまで客席につけられていた照明が突然消えた。会場内に、一斉に歓声がわき起こる。
そして、巨大スクリーンには、93年当時のTOSHIが姿を現した。
続いてHIDEが、PATAが、HEATHが続々と我々の前に姿を現した。
みんなでどうやらYOSHIKIを呼びに行くというシーンらしい。しかし、YOSHIKIの家に入ったものの、YOSHIKIは何処にもいない…すると、シャワー室からなにやら音が聞こえてくる。YOSHIKIは、シャワーを浴びている真っ最中だったらしい。
そして時代は流れ、現代へ。
FILM GIG の3日前のシーンに一気に飛んだ。
しかし、そこでもYOSHIKIは相変わらずシャワーを浴びていた。インタビュアーそっちのけで、相変わらずマイペースのYOSHIKIである。


 そして、いよいよスタートである!
FILM GIG featuring ART OF LIFE のオープニングは、前回と同じだ。
インディーズ時代のヴァージョンである、「KURENAI」からまずはスタートした。
そして、1年、また1年と、曲の最中に時代を重ねていき、最終的にはラストライブの映像まで達した。やはりこの曲なくしてX は語れない。

 オープニングが終わると、一気に「VANISHING VISION」に演奏は移った。
この曲は、X のデビュー前の初期の名曲である。
メジャーデビュー直前の映像や、デビュー後の映像など、様々なテイクがつなぎ合わされていた。

そして次は、メジャーでビューアルバムのタイトルともなった、「BLUE BLOOD」である。
この2曲はいずれも、初期の名曲である。

そして2曲が終わると、今度はハードロックから一転し、YOSHIKIのピアノソロへと場面は変わった。おそらく95年あたりのドームライブの映像であろう。
YOSHIKIの繊細なピアノは、「Amethyst」を奏でていた。開場時間から開演時間までの間にもかかっていた、YOSHIKI作曲のオーケストラ曲である。
最初はピアノのみの演奏だったが、次第にオーケストラのオリジナルバージョンとミックスされ、ついには97年のラストライブのテイクと重なった。
それぞれがそれぞれの思惑を胸に、ステージの登場し、スタンバイしている。

introducing... X JAPAN JAPAN JAPAN JAPAN JAPAN...


 そして登場するのが、おなじみの「Rusty Nail」だ。
ドラムセットのハイハットが3発鳴り、バンド演奏に移った瞬間には、炎の柱が立ち上がった。
照明や演出は、当時のままである。
97年のラストライブから始まり、過去のテイクなども織り交ぜられ、そしてまた最終的にはラストライブの映像に戻って曲は終わった。
しかし、途中TOSHIはかなり歌詞を間違えて歌っていた。

2番なのに3番を歌ってしまい、そして途中で元に戻ったと想ったら、
それは2番ではなく1番だったり…頑張れTOSHI!


 次に登場した曲は、「DAHLIA」だった。
この曲は、X JAPAN のラストとなったオリジナルアルバムのタイトルと同じである。
YOSHIKIがX JAPAN に書いた最後のハードロックナンバーともいえる名曲だ。
オーケストラとバンド演奏の絶妙なマッチが、他のバンドと決定的に違う点である。

DAHLIA がTOSHIの叫び声と共に終了すると、次はX JAPAN が初期の頃から演奏しなかった日がなかったと言えるほどのおなじみの曲「WEEK END」に突入した。
もちろん、95年以降から歌われているライブバージョンである。
この曲は、そもそもアルバム「BLUE BLOOD」に収録されていたのが1番目で、
次はシングルで発表されたときに、2番目としてギターソロ、ピアノソロ、オーケストレーションなどが新しくなって登場した。
そして最終形態は、途中でYOSHIKIとTOSHI2人だけのシーンがあり、その後にYOSHIKIのインプロヴィゼーションによる壮大なピアノソロがあるという、ライブ特有のバージョンである。テイクは、97年のラストライブからだった。

 「WEEK END」が終わったら、ライブはDAHLIA TOUR 中の映像へと移っていった。
ツアーに飽き始めたYOSHIKIが、銅鑼に向かってマレットを思い切り投げつけ、
急いでそれをスタッフが拾いに行くというシーンなど、普段では絶対に見ることが出来ないシーンなど、お宝映像が満載だ。
また、北海道での公演の際に、YOSHIKIがファンのために弾いたクリスマスソングなども収録されていた。

そして、次は同じく北海道での公演の時のテイクで、「UNFINISHED」である。
アルバム「X JAPAN LIVE IN HOKKAIDO」とおそらく同じテイクであろう。

続いて、X JAPAN のメンバー全員が、サンタクロースの格好をして「Say Anything」と共に登場してくるシーンが上映された。

 そして、1996年3月名古屋…この日が何を意味するのかは、もう言うまでもない。
YOSHIKIが筋断裂を起こし、ツアーが中止になった日である。

」の後半、YOSHIKIが肩を押さえてうずくまっている。
それでも何とか最後まで叩ききったYOSHIKIは、倒れ込むようにステージ袖へとはけていった。

ラストライブからのテイクである「Longing」をバックに、TOSHIが必死にファンたちにYOSHIKIの症状を語っていた。

「現状では、何とも言えない。明日のことも言えない状況だ。待ってていてくれ。」

TOSHIはファンたちに語りかけた。
会場では、泣き崩れるファンが後を絶たない。
YOSHIKIは果たして戻ってきてくれるのだろうか…そして月日はアレグロよりも早く、
96年12月30日。X JAPAN はファンたちのもとに帰ってきた。
完全復活をしたYOSHIKIのドラムプレイの姿は、当時から比べて全く衰えていない。

会場に詰め寄った5万人のファンたちは、この瞬間を心から待ち望んでいたのである。

Longing が終了して、過去のDAHLIA TOUR 中の舞台裏のシーンは終了した。どうやらこの辺りのシーンは、
前回の「X JAPAN FILM GIG 〜X JAPANの軌跡〜」からのテイクと全く同じだったようだ。

 そしてライブは続き、97年ラストライブバージョンから始まる、「」だ。
「紅だぁ〜!!」の直後には、恒例の銀テープ。
しかも、今回は1階席ではなく、2階席に向かって8方向に銀テープがちりばめられた。
途中、TOSHIの声と共に、ファン全員が
「HIDE〜!!」「YOSHIKI〜!!」と叫ぶ。

紅が演奏し終わると、間髪を入れずに「オルガスム」へと続く。
97年ラストライブを中心とはしているが、デビュー当時の映像も織り交ぜるなど、前回とは違った編集になっていた。
HIDEとTOSHIの2人の腕立て伏せなど、暖かく笑える映像ももちろん収録されていた。
15分を越えるこの曲は、メンバーとファンが一体となって燃え上がるお馴染みの曲である。

 「オルガスム」が終了し、コンサートは終了となった。
しかし、これで終わるはずがない。ファンたちは分かっている。

次に登場した曲は、今回のコンサートの主役とも言える、93年の12月30日と31日のたった2日間のみ演奏された、伝説の名曲「ART OF LIFE」である。
YOSHIKIの切ないピアノソロから始まり、TOSHIの美しく透き通ったヴォーカル。
ギターソロでは、ギターと共にオーケストラが壮大なメロディーを歌い上げる。
15分の演奏の後に第2楽章的に登場するのは、ピアノ2台による約10分間のデュオだ。
YOSHIKIのインプロヴィゼーションによるピアノは、美しい旋律、切ない旋律、そして激しく鍵盤をたたきつける狂気の旋律を奏であげる。
ピアノから生まれてくる音1音1音にYOSHIKIは魂を吹き込めながら命を懸けて叩く。

そう。まさに、YOSHIKIのピアノから生まれる旋律は、全て命を持っているのである。
そしてその旋律は、インプロヴィゼーション故に、2度とこの世に生まれることがない。1
瞬の永遠なのである。
激しいピアノソロの終盤には、弦楽器がかすかな希望のメロディーを奏で始める。
弦の音が少しずつ大きくなっていき、YOSHIKIのピアノが少しずつ小さくなっていく。YOSHIKIの混沌とした世界の中に、希望が見え始めたのだ。
そして第3楽章。音楽は再びバンド演奏の世界へと戻っていく。
曲の中で合計3回登場する大サビは、3回全てがテンポが実は異なっているのだ。
3回目の大サビは、最も遅いテンポで演奏される。
重く重厚になった音楽に、ピアノ、ホルン、弦楽器が加わり、曲は更に熱く厚くなっていく。
そして開始から約34分後。TOSHIの切なく、そして美しいヴォーカルのフェルマータで曲は終演する。
発売されてから10年の歳月を経て、初めて映像作品としてこの世の中に登場したこの曲だが、YOSHIKIだけでなく、この曲自身も世の中に出る時期を考えていたのであろう。1
0年たった今でも、この曲に込められたメンバーやファンの想いは色褪せることはない。


 続いてライブは、YOSHIKIの「Drum Solo」へ。
これも、97年ラストライブだけでなく、様々な過去のライブからのカットが使われていた。
そしてもちろん、この後に登場する曲は、TOSHIのヴォーカルのみでスタートする、
Forever Love」だ。

97年ラストライブからのカットである。
この曲は、HIDEの告別式でも歌われ、ファン以外でも数多くの人に愛されている名曲中の
名曲である。
「ENDLESS RAIN」や「Say Anything」と同様、X JAPAN になくてはならない名曲の1つであろう。

 数多くの涙と共に曲が終了。そして次の曲は、DAHLIA TOUR 以後、全く歌われなくなってしまった「Silent Jealousy」である。
ピアノソロではなく、TOSHIのヴォーカルのみで始まった。
例によって中盤のピアノソロはカットされていたが、激しさ、美しさ共に全く申し分ない、完成された曲だ。激しさの最高潮で曲が終わり、

次に登場したのは、HIDE作詞・作曲の「SCARS」だ。
前回のFILM GIGで、曲の構成は、「X JAPAN BEST Fun's Selection」を参考にしたらしいが、YOSHIKIはこの2曲を入れたかったと言っていた。今回のFILM GIG で、ついにこの2曲が登場したのである。

 そして、今日のコンサートもいよいよ架橋へと突入していく。「X」の登場である。
デビュー当時の映像から始まり、1回目のサビの後の間奏で97年のラストライブの映像へと瞬時にチェンジする。
おそらく、前回のFILM GIGと同じ編集であろう。
サビの部分での、ファン全員による「Xジャンプ」は、実際のコンサートと全く変わらない勢いだ。

 「X」が終わり、ついにライブは終演となった。
しかし、それからどれくらいの時間が過ぎただろうか…再び会場からTOSHIの声が響きわたる。

「それじゃぁ…かけがえのない…みんなと一緒に…この曲を…一緒に…分かち合いたいと想います…」

この言葉との後、YOSHIKIの美しく切ないピアノから始まるこの曲は、「ENDLESS RAIN」。
去年末のYOSHIKIのシンフォニックコンサートの際にも、最後の曲として演奏され、ラストはファン全員による大合唱へとなる曲である。
たとえメンバーがいなくても、集まったファンたちは、歌い続ける。
ずっと。ずっと。ずっと…
会場のあちこちから涙声が聞こえ始める。
Xのメンバーだけでなく、Xのファン全員にとっても、この曲はそれほど思い入れの深い曲なのだ。

この曲なくして、Xは決して語れないだろう。
YOSHIKIは、「この曲には自分自身が何度も救われた。」と語るように
、この曲によって救われた人々も数え切れないほどいるはずである。
永遠に降り注ぐ雨の中、必死に答えを見つけようと終わりのない道をさまよい歩き続ける…それは、人生への問いかけのようなものだろう。
自分は夜の空に、何のために生まれてきたのか…自分とは何なのか…果たして自分に何が出来るのだろうか…そんな思いを胸に、いつまでも歌い続ける…

 一体何回繰り返しただろうか…いつの間にかスクリーンの映像は消えていた。
これで本当に終演だろうか…

すると突然、再びスクリーンが暗くなり、
YOSHIKIの美しいピアノの音色が聞こえてきた。

「YOSHIKI〜!!!」ファン全員が一体となりYOSHIKIの名を呼ぶ声が聞こえる。
残念ながら、それはYOSHIKI本人による生演奏ではなく、YOSHIKIがこの日のために用意していたファンたちへのメッセージであった。

曲は、「Without You」だ。
98年5月2日に永遠の旅へといってしまったHIDEの追悼曲としてYOSHIKIが書いた曲だ。
とても美しく、とても優しく、そして切ない…スクリーンには、YOSHIKIのメッセージが次々と映し出される。
生きていく答えも見つけられないまま、もがき苦しみ続ける1人の詩人のように…ボーカルは入っていなかったが、もしこの曲をTOSHIが歌っていたら、間違いなくそれは「X JAPAN」の名曲として存在することになっただろう。

 「Without You」が終わり、ついに今日のコンサートは完全に終了した。スクリーンの映像は完全に消え、客席にライトが灯される。Ending Song は、「Tears」だ。
少しずつ、集まったファンたちが会場を後にし始める。2003年9月21日。新たな伝説が1つ生まれた。そういえば、Xが解散したのは今から6年前の、97年9月22日だった。
あの日からちょうど6年後の今日、X JAPAN は、FILM GIG として蘇り、ファンたちの前にあの頃と全く変わらない姿を見せてくれた。
YOSHIKI本人は会場に姿を見せてはくれなかったが、YOSHIKIのメッセージはしっかりとファンの心の中に届いただろう。永遠に離れることなく…